世界のテックトレンドを俯瞰する場として存在感を増す「CES2024」

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世界のテックトレンドを俯瞰する場として存在感を増す「CES2024」

今年も米国ラスベガスで世界最大級のテクノロジーイベント「CES(シーイーエス)」が開催された。2024年1月9日から12日までの4日間で参加者数は13万5千人を超え、出展者数はスタートアップ1,400社を含めて4,000以上と、パンデミック前の盛況も久しぶりに戻ってきた。

会場は4年ぶりに盛況を取り戻していた。

CESは、画期的なテクノロジーと世界的なイノベーターが集う、世界で最もパワフルなテックイベントとして知られており、ブランドがビジネスを成功させ、新たなパートナーと出会い、業界で最も鋭敏な頭脳がステージに立ち、最新リリースや最も大胆なブレークスルーを発表するテクノロジー全体を包括する唯一の見本市だ。Kickbrainでも2022年に開催された「CES2022」を紹介している。

主催するCTA(全米民生技術協会)は100周年を迎える間に、CESをテレビなどの家電を中心とした電子機器の見本市から、前述の通りありとあらゆる分野を活性させるテクノロジーのトレンドを見せるイベントへと変化させてきた。今年のテーマ「ALL ON」が象徴するように、コンシューマだけでなくエンタープライズからインフラ、公共事業まで、テクノロジーはいろいろなカタチで社会に不可欠なものになっている。

CESを主催するCTAは今年で100周年を迎え、その歴史が紹介されていた。

今年もKickbrain取材班が会場へ参加、本記事ではCES2024のトレンドに迫る。社会課題解決に資する最先端のテクノロジーを、ぜひ知っていただきたい。

話題になったAI、その中身とは?

様々なテクノロジーがある中で、最も話題になっていのがAI(人工知能)だ。会場内でAIの文字を見ないところはなく、社名にAIが付いたり、「.ai」ドメインを使っているところも多かった。生成AI(Gen AI)が使われていることをアピールするブースも多く、生成AIを使ったイラストやデジタルヒューマンも目に付いたが、ほとんどがChatGPTを使ったチャットボットサービスや対話型ユーザーインターフィスで、2018年のCESで、GoogleやAmazonの音声アシスタントが大きな話題になった時を思い起こさせる。

CESも生成AIイラストを使っていた。

ChatGPTの影響でデジタルヒューマンが増える?

そうした中でモビリティ分野では、早くから音声アシスタントが導入されてきたことから1歩進んだ活用が見られた。自動車業界向けAIアシスタント技術を開発するセレンスがフォルクスワーゲンやMicrosoftと協業して開発した「Cerence Chat Pro」は、音声アシスタントIDA(アイダ)にChatGPTを統合し、「窓を開けて」「パン屋を探して」といった自然な言葉で、車内の機能からナビまで操作できるようにしている。回答に使うLLM(大規模言語モデル)をNVIDIAとも開発しており、自動車メーカーが車両にあわせてカスタマイズすることもできる。

セレンスはChatGPTを自動車に最適化したAIシステムを開発している。

モビリティでは自動運転をはじめ、ADAS(先進運転支援システム)でのAI活用が進んでいる。SONYはホンダと共同設立したソニー・ホンダモビリティ株式会社が開発する「AFFELA」に、周囲の状況をセンシングし、ドライバーの状態を認識する技術を提供している。同じような機能は他のメーカーでも見られ、コネクテッドカー、車載インフォテインメントでも生成AIを活用する事例が紹介されていた。

自動車の開発ではあらゆるところでAIが使われている。

身近なところでは韓国の家電メーカーがAIの活用に積極的で、サムスンやLGは以前からスマート家電を中心に上手く製品に取り込んでいるが、さらに快適でサスティナブルなライフスタイルをAIで最適化している。その一つ、サムスンの最新冷蔵庫「4ドア Flex」は、扉の1つが32インチのディスプレイになっており、ビルトインされたAmazonのアレクサを使って様々な情報を表示できる。また、庫内の食品をAIカメラで認識して賞味期限を通知したり、食生活にあわせたレシピを提案したり、その手順を他のキッチン家電と連携することもできる。

サムスンは冷蔵庫をAIで賢くした上に他の家電と連携させてキッチン全体をコネクテッドにしている。

今年のCES2024はエンタープライズ関連の出展が増えており、製造工場や工事現場をAIで活性化するソリューションが複数発表されていた。ロボットやドローン、農作業トラクター、建築作業車、重機などをスマート化し、現場に最適化するところでAIが使われているが、開発するエンジニアリング技術がますます重要になることから、人材の育成やグローバルでの採用競争が今後強まりそうだ。

農作業や工事現場で使用される専用車両をAIで管理、コントロールするシステムが数多く発表され、注目を集めていた。

AIはあらゆる分野で利用され、開発者の採用が増えている。

ビジネス、プレゼン、エンタメ以外でのバーチャルの活用が進む

会場で意外にも多かったのがVR、AR、XR関連の出展だ。HMD(ヘッドマウントディスプレイ)やスマートグラスも数多く出展されていたが、どちらかといえばビジネスでの活用が多く、会場内ではVRやXRを使った体験型展示が当たり前のようにあった。

スマートグラスやHMDの展示が多く、XRを利用した体験展示も多かった。

XRのビジネス活用ではソニーが新しいXR HMDを発表して会場を驚かせた。そのHMDを開発しているドイツの総合電機メーカーシーメンスは、産業向けメタバースやデジタルツインといった製造現場のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進するシステム開発で躍進している。基調講演では、バーチャルで共同作業ができるツールなど様々なソリューションを発表していた。

シーメンスはSONYとビジネス用の新型XR HMDを共同開発している。

スマートグラスはXREAL、VUZIX、レノボ、シャープが新製品を展示し、多くの人たちが体験していた。中でもAIを活用したSNSの投稿機能に特化したMetaのレイバンスマートグラスは、ラスベガス内のショップでは会期中に売り切れてしまったという話もあった。

Metaのレイバングラスは日本では未発売だ。

聴覚障害や識字障害など生活をサポートするスマートグラスが登場している。

また、スマートグラスはアクセシビリティ分野で活用が広がっており、Metaのレイバングラスを開発するイタリア企業は、メガネにしか見えないスマート補聴器「Nuance Audio」を発表している。他にも、目の前にあるものを小型カメラで読み込んで音声で教えてくれたり、識字障害をサポートしたり、視覚障害者をガイドする製品も開発されている。

日々の生活をサポートするテクノロジーに期待が高まる

今年のCES2024は高齢者や障がい者をサポートするアクセシビリティ製品も多かった印象だ。スタートアップが集まるEureka Parkでは、自動運転で使われるセンシング機能を活用して道案内をしたり、小型ロボットにして白杖代わりにしたりする技術が出展されていた。技術を利用する側の人たちも体験者としてたくさん来場しており、新しい技術に期待を寄せていることが感じられた。

最新のテクノロジーを取り入れたアクセシビリティ機器が増えている。

CTAはテクノロジーを用いた社会課題の解決の取り組みに力を入れており、革新的な製品やサービスを表彰する「Innovation Award」の選出カテゴリにも「Sustainability, Eco-Design & Smart Energy」があり、38社が受賞している。会場では藻を使って発電したり、空気中の水を集めたりといった、特許を持つディープテックも多く展示されており、この分野がテックトレンドとして重要視されていることがわかる。

特許技術を用いてエネルギーや環境問題を解決する展示はあちこちで見られた。

また、昨年から国連らと連携して展開しているグローバルキャンペーン「HS4A(Human Security for All=すべての人のための安全保障)」も継続されている。1994年に国連が導入した人間の安全保障では、経済、環境、食料、健康、政治、個人、地域社会の安全保障が柱となっており、昨年9月に8番目の柱としてテクノロジーが追加されている。活動についてはセッションを通じて紹介され、積極的に参加するパナソニックも登壇している。

他にもここでは紹介しきれないほどCESのジャンルは広がっており、展示カテゴリは50近くまで増えている。大手企業はCESの前後に新製品を発表するところも増えており、話題性という点ではやや物足りないという声も聞かれたが、それでも世界からこれだけの数の最新テクノロジーが一つの場に集まり、実際に見て話を聞ける場はCESしかないだろう。

基調講演や一部のセッション、出展者の情報は期間限定でオンラインでも見られる。社会課題の解決には探究的なソフト的アプローチのみならず、ソフトを搭載する最先端のハード、両方からアプローチが必要だ。ハードのテックトレンド全体を見るという意味で、今年のCESでは何が発表されたのかを知っておくことは、大きな価値があるはずだ。

CESはテックトレンドをウォッチする場として存在感を示している。

関連URL
https://www.ces.tech

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