AFRI-CONVERSE 2023 #03 “アフリカの若者への投資:新世代のリーダーと専門家育成”

World

初の東京以外での開催となったAFRI-CONVERSE(アフリコンバース)

豊富な資源や急速な人口増加率を誇り、経済成長への大きな可能性を有しているアフリカ。そんなアフリカの開発について、国際協力機構(JICA)と国連開発計画(UNDP)が2020年から開催している対話型のイベント「AFRI-CONVERSE(アフリコンバース)」。2023年8月23日に神戸情報大学院大学(KIC)の協力の下、初の東京以外での開催となった。開催地・神戸は、ルワンダのキガリ市とのパートナーシップ宣言や、同国での起業経験提供プログラム「Kobe Start-up Africa」の実施など、近年アフリカとのつながりを深めており、会場となったKICはアフリカをはじめこれまで世界90ヵ国以上から学生を長期・短期で受け入れており、アフリカだけでも38ヵ国にものぼる。15回目となる今回は、まさに学び舎に相応しい“アフリカの若者への投資”がテーマ。中村俊之氏(JICA 理事長特別補佐)をはじめ、内藤智之氏(神戸情報大学院大学副学長・特任教授)のモデレートの下、アフナ・エザコンワ氏(UNDP アフリカ局長)、クダ クワシェ・チンゴノ氏(UNDP African Young Women Leaders Fellowship Program調整官)、デルフィン・ムカヒルワ氏(アフリカの若者のための産業人材育成イニシアティブ(ABEイニシアティブ)研修員、神戸情報大学院大学2023年9月修了生)、青田朱実氏(パソナグループ 執行役員)らがリアル・オンラインで登壇し、講演やパネルディスカッションを行った。KICの会場とオンラインで併せて約300名の参加があった。

本イベントではどんなことが語られたのか改めて振り返っていく。

日本とアフリカの関係性の転換点へ向けて

基調講演には、中村俊之氏とアフナ・エザコンワ氏がそれぞれ登壇。中村氏は、今回の「アフリカの若者」というテーマに触れ、次のように語った。

中村氏「アフリカは、2050年には世界人口の4分の1を占め、かつ平均年齢が約25歳と推測されており、若者人口の多さから経済発展への期待が高まっている大陸です。そうした未来を実現するためには、同地域の若者に対する人材育成や雇用の創出、産業の発展が重要になってきます。日本としては、これまで職業訓練校による産業人材の育成をはじめ日本のものづくりのノウハウを移転するKAIZENプロジェクトなどを進めてきました。そして、10年前の第5回アフリカ開発会議(TICAD5)よりABEイニシアティブ(*1)をスタートし、アフリカの若者の日本への留学を支援し、学びだけでなく日本企業のアフリカ進出の水先案内人としての役割を担ってもらっています。既に、母国に帰国し、スタートアップ企業を立ち上げるなど、アフリカの若者たちの躍進が感じられています。」

加えて、2025年に開催される第9回アフリカ開発会議(TICAD9)についても触れ、これまでの日本とアフリカとのパートナーシップの成果も踏まえつつ、同会議が次の30年の日本とアフリカの関係性の転換点になるだろうと期待を寄せた。

エザコンワ氏は、アフリカ連合(AU)とUNDPが共同で行っているAfrican Young Women Leaders Fellowship Program(AfYWL *2)に触れ、次のように述べていた。

エンコザワ氏「アフリカの次世代のリーダー、特に女性リーダーの育成が今後のアフリカの発展には欠かせないと考えています。そのためのAfYWLであり、UNDPにおいて1年間フェローシップとして勤務してもらいます。これまで2期の応募を受け付けましたが、数多くの女性たちから応募がありました。今年の3期生の応募では、受け入れ人数を増やしていく準備もできています。

アフリカの若者たちは、既に次のステージへと歩みを進めています。彼・彼女らが求めているのは援助ではなく公平性であり、プロセスでなくインパクトです。貴重な開発資源をそうしたニーズに合わせて投入し、彼・彼女らと共に発展していきたいと思います。」

両氏の話を聞いて、アフリカは今、支援ではなく、ビジネスによる社会課題解決、成長を求めているのだと改めて感じた。ビジネスを進めるための人材群もアフリカ各国で育ってきているとJICA、UNDPともに援助機関としての手ごたえを掴んでいるのではないだろうか。

また、日本政府が主導するTICADは、2023年で開始より30年の節目を迎えている。その歴史の中で、2008年のTICAD4にてアフリカへの民間投資拡充の方向性が大きく打ち出され、官民連携によるアフリカ地域の開発促進の動きも15年が過ぎようとしている。

ただ、両氏のコメントでもアフリカの市場可能性や開発ニーズの変化が強調されているように、想像以上に日本企業のアフリカ市場への動きは活発ではないのが現状だ。これには、官と民での意思決定プロセスの違いやアフリカ市場の捉え方の違い、はたまたコロナ禍のような社会情勢の変化など、さまざまな要因があるだろう。この要因について解像度高く捉えられれば、アフリカの可能性がより拡大できる施策が見出せるのではないかと考えている。

だからこそ、2025年のTICAD9に向けて日本とアフリカ諸国との間で、どのようなコミュニケーションが図られるのか、期待をしたい。

 

注釈1: アフリカの産業人材育成と日本企業のアフリカビジネスをサポートする「水先案内人」の育成を目的として、アフリカの若者を日本に招き、日本の大学での修士号取得と日本企業などでのインターンシップの機会を提供するプログラム
注釈2:2019年に設立されたアフリカ若い女性リーダー(AfYWL)フェローシッププログラム・国連の持続可能な開発目標(SDGs)とアフリカの課題に照らした開発プログラムの設計と実施を通じて、アフリカと世界に奉仕する新世代の若いアフリカ女性リーダーを育成することを目指している。
日本とアフリカが共に成長していくカギとは?

では2025年のTICAD9が日本とアフリカの関係性の転換点になり、日本とアフリカが共に成長していくとしたら、そのカギは一体どこにあるのだろうか。同イベントのパネルディスカッションでは「テクノロジー」「雇用」「イノベーション」「リーダーシップ」の4つのテーマを中心に、そのヒントに迫った。

教育機関であるKICや、今回登壇した青田氏の株式会社パソナグループをはじめ、日本へ留学や、就職先として受け入れを行う日本企業が参加するプログラムは数多くある。その一方で、プログラム参加者が日本社会において活躍したいと思っても言語の壁が立ちはだかる現実があり、日本語能力を必須としていない日本企業はまだまだ少ないという意見が述べられた。

ただし、参加者自身のビジョンの持ちようでも変わるという指摘もある。国籍に関係なく、明確に“〇〇をしたい”と目標を持っている人材のほとんどは、日本に残ってアクションを起こせているとのこと。一方で、ただ「何かをしたい」とビジョンが漠然だったり「自国に帰りたくない」というようなモチベーションの場合は、次へとつながらないケースが多いとのことだった。

選抜された人材だとしても、明確なビジョンを持てていないと具体的なアクションが起こしづらいという点は、日本にも共通する課題ではないか。日本人でも「具体的に、何をしたいかがわからない」という悩みを持つ人が最近、増えてきている。この課題が世界共通にあるということは、とても意外だった半面、日本とアフリカが共に成長していくカギへのヒントが隠されていそうだ。

というのも、私をはじめ日本人は、積極的な発言ができない、自分に自信がないなど、どことなく海外、特に欧米へのコンプレックスを持っているように見受けられる。

ただ、そのコンプレックスは、外国人との関わりの中で生まれたモノではなく、インターネットの情報などから形成されている外国人のステレオタイプとの比較から生まれている場合が多い。

だからこそ、特に若い人材としての日本人が抱く外国人へのステレオタイプをアップデートできれば、アフリカをはじめとした海外への理解も進み、日本企業の海外ビジネスの展開スピードも早まる手がかりになるのではないだろうか。
実際、私もセネガル共和国に3年弱滞在している中で、日本人である自分と現地の人々との人間性における共通点を数多く発見できた。そこから「同じ人間なんだ」と実感した上で、異なる慣習を認識し、共に成長するための方法は何かを具体的に探っていけたと思っている。

筆者の青年海外協力隊時代の活動風景:村落部女性グループへの研修会(セネガル)

チンゴノ氏「アフリカのリーダーを育てるためには、人材を育成するプログラムの量と質の両方に焦点を当てる必要があります。また、若者の参画の継続性も重要です。」
ムカヒルワ氏「真に成功するリーダーを育成するには、サポート、評価、励ましの要素が欠かせません。メンターシップを通じて、個人のスキルと知識の応用、成長を促進できます。」
と両名が述べているように、若い人材のスキルの向上だけではなく、サポート、評価、励ましを行うメンターシップが、カギとなることは間違いなさそうだ。

そして今、JICAも日本国内における多文化共生など日本人の外国人材に対する理解向上に注力し、2020年11月にJP-MIRAIという外国人労働者受入れプラットフォームを自治体、民間企業、弁護士などの多様なステークホルダーと共に立ち上げたり、2021年4月には国内事業部に外国人材受入支援室を設置するなど積極的な動きを見せている。

そうした動きを見ていると今までの、アフリカなどグローバルサウスへの「人への投資」と「産業成長支援」の両輪に加えて、日本国内への「海外へのビジネス展開支援」と「日本における多文化共生」も合わせた四輪駆動でのアプローチが、日本とアフリカが共に成長していくカギになり得るのではないか。現にエザコンワ氏も、まず人への投資(人材育成)は非常に重要であることを強調し、その上で、人の成長の先にスキルが発揮できる場や機会が不可欠であり、人材育成が雇用につながらなければないことをディスカッションの中で指摘していた。

最後に、エザコンワ氏は「2025年のTICAD9に何を求めているのか。」という問いに対して、次のように回答していた。

エンコザワ氏「アフリカの開発が遅れているのは「お金」や「個の能力」の問題でなく、諸外国の多くの人が抱いているアフリカへの固定概念(イメージ)が問題である。例えば、アフリカは政治が腐敗している、教育が行き届いていないから優秀な人材が少ないなどだ。UNDPの調査では、こうしたマイナスイメージによっての経済損失は750億ドルにも上るとのデータもある。

一方で、今回、紹介されたプログラムの参加者などを見ても、次世代の優秀な人材はアフリカ各国で育ってきているし、それぞれが起業家精神を持ち、今、アフリカに変化をもたらしている現実がある。

そうした現実をTICADといった大きな国際会議の場で認識してもらい、アフリカとのパートナーシップのあり方を援助だけではなく、ビジネスや投資といった形にもシフトしてもらいたい。」

日本とアフリカ、相互に固定概念を崩し、真のパートナーシップを築く若者が増えていくことを、期待したい。

神戸市からアフリカを見る

閉会の挨拶として、木村出氏(JICA関西センター所長)よりイベントテーマである“アフリカの若者(次世代)への投資”に触れながら、次のように述べた。

木村氏「神戸市は2016年にルワンダの首都キガリと「パートナーシップ共同宣言」を締結し、同国との関係を強化してきました。そして今回の会場である神戸情報大学院大学(KIC)は、アフリカと日本の交流のハブであると我々、JICAも認識しています。これまでABEイニシアティブにおいて約1,600人のアフリカからの留学生が来日している中、KICは受け入れ人数で国内の大学の中で2番目に多く、120人以上の留学生が学んできています。また、視野を広げて関西地域として神戸を見れば、2025年のTICAD9の年には大阪・関西万博が開催され、世界からも注目が集まる地域です。そうした意味でも今回のアフリカについてのイベントを神戸で開催できたことは大きな意義があったと思います。」

これまであまりイメージはなかったが、神戸市とアフリカはとても近い存在のようだ。2025年には大阪・関西万博の開催も控え、国外からさらに注目を浴びることは間違いない。今回のイベントを契機に関西そして神戸市のことを知ったアフリカの人も少なくないだろう。今回のアフリカコンバースは、“2025年のTICAD9までの動きが、どう日本社会とアフリカに変化をもたらしていくのか”、“関西そして神戸市とアフリカとの新たな関係性が、どんな形になっていくのか”など、貴重な問いが生まれた場になった。今後、この問いの答えを探るアクションなどが関西そして神戸市から発信されていくことが楽しみだ。

なお、UNDP公式のイベントレポートは下記より読むことができる。

日本語:持続可能な未来を切り開くため、アフリカの次世代リーダーと専門家に投資 | United Nations Development Programme (undp.org)

英語:Investing in Africa’s next generation of leaders and professionals to unlock a sustainable future | United Nations Development Programme (undp.org)

する『知識』を発信する
Webマガジン