「monoAI technology」の独自メタバース・プラットフォームを構築する原動力

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独自技術をベースにした高品質のメタバース・プラットフォームで注目を集める

リモートワークの定着によりオンライン上で会議やカンファレンス、展示会を行う機会が増え、よりコミュニケーションの密度を高めるためにメタバースを活用する動きが世界中で進んでいる。すでに日本発のサービスも複数登場する中で注目を集めているのが、ゲームエンジンをベースにしたメタバース・プラットフォーム「XR CLOUD」を開発する「monoAI technology(モノアイテクノロジー)」である。パソコンやスマホなど異なるデバイスから大人数が同時に接続できるバーチャル空間は、ビジネスからエンターテイメントまで幅広いニーズに対応し、数多くのクライアントに採用されている。

ここでは XR CLOUD の開発経緯からメタバースを取巻く状況や今後について、XR CLOUD 上にあるmonoAI technologyのバーチャルオフィスで代表取締役社長 本城 嘉太郎 氏にインタビューを行った。

本インタビューはmonoAI technologyが手がけるメタバース・プラットフォーム「XR CLOUD」上で行われた。
10代で体験したオンラインゲームの世界観を自分の力で構築したい

メタバースでコミュニケーションができるゲームやツールはいろいろ登場しているが、その中でもXR CLOUD は独自の通信技術による大規模同時接続エンジンを搭載し、同じバーチャル空間に大人数がPCブラウザやスマホアプリなど異なるデバイスを使ってアクセスできることを特徴としている。約40種類から選べるアバターはバーチャル空間内を自在に移動でき、双方向での会話やテキストチャットをはじめ、エモートと呼ぶ手を挙げたりジャンプするといったアクションができる。

バーチャル空間もいろいろ作り込みができ、オフィスやイベント会場、店舗などをリアルにあわせてデザインすることもでき、今回の本インタビューはそうして作られたバーチャルオフィスでリモートでありながらリアルさながらの雰囲気で行われた。

本城:当社はゲーム開発の会社からスタートしていて、XR CLOUD もゲームエンジンをベースにしているのが特徴です。これまでゲーム製作で培われた様々な技術をベースに、異なる環境のユーザーが同時に大人数でアクセスできることを目指していて、ニーズにあわせて空間やアバターのカスタマイズもできます。

本城:他のプラットフォームとの違いは一般向けのBtoCよりもBtoB向けで、主に企業の新商品発表会やイベントで利用されています。事例としては、昨年度に引き続き今年度も神戸市が主催する「神戸のつどい」イベントや、最近では24時間テレビで使われたり、イラストコミュニケーションサービスを運営するピクシブが開催する同人誌即売会『NEOKET』も好評を得ており、まもなく3回目が開催される予定です。」

2022年12月12日にリアルとメタバース空間で同時開催された神戸のつどいではKICも出展

XR CLOUD は主にBtoBを中心に企業の展示会やイベントに採用されている。2022年12月12日に開催された「神戸のつどい」では神戸情報大学院大学(KIC)もVR出展した。

今や世界に広がるメタバース熱の高まりにぴたりとあわせるようにXR CLOUD をリリースできたのは、もともと本城氏が目指していたのがオンラインで誰もが自由にコミュニケーションできるのが当たり前になる世界の到来を予測していたからというのもある。そのきっかけは20年前に登場したMMORPGの元祖といわれるウルティマオンライン(ULTIMA ONLINE)というオンラインゲームの存在だった。

本城:当時は10代だったのですが、それまでは1人でプレイするゲームしかなかったのが、オンラインで世界中の人たちと繋がって英語で会話しながら冒険するというウルティマオンラインの世界観にすっかりハマってしまいました。その中では友達ができたり、自分の家を作るなど経済も回っていて、第2の人生が送れるようなすごい体験ができるのに世の中にはまだ知られてなくて、いずれは自分でもそうした技術を実現できるようになりたいと思うようになりました。

その後本城氏は個人プログラマーとしてゲームを作ったり、サーバーエンジニアとして6年ほど経験を積み、2005年に独立してゲーム開発会社のモノビットを設立した。そこでオンラインゲームの開発を10年以上続けたところで、2013年にリアルタイム通信エンジンに革命をもたらす高速、高性能な通信ライブラリのモノビットエンジンを初公開したことにあわせて社名を monoAI technology に変更した。

誰もがコミュニケーションしやすい環境にするための技術バランス

本城氏はmonoAI technology を立ち上げた当初、オンラインゲームの市場は出来上がりつつあったものの、一般に広がるのはまだ時間がかかるだろうと考えていたそうだが、状況は2017年にオンラインゲーム「フォートナイト(Fortnite)」が登場したことで一気に変わった。

本城:フォートナイトの世界観はウルティマオンラインに似ていて、ただゲームをするだけでなくコンサートなどのイベントにも使われている上に、小学生がおしゃべりする場所に使っているというのを知って、メタバースのニーズがようやく出来たと感じました。そこでXR CLOUD の開発に着手しましたが、それでも収益につながるには5年か10年ぐらいかかると思っていました。

本城:ところが1年ほどたった頃にコロナ感染が拡大し、その影響でオンラインでコミュニケーションをするのが当たり前に近い状況になり、FacebookがMETAに社名を変更したという影響もあって、私たちが作っていたメタバース・プラットフォームが認知されるようになり、ビジネスへとつながりはじめたのです。

急速な状況の変化に開発がまだ追いついていなかったのではないかと思いきや、タイミングとしてはベストに近く、むしろ今は状況にあわせて技術を抑えているのだという。例えば、このインタビューを行っているオフィス空間はかなり作り込んでいるように見えるが、プレイステーション5のゲームに比べるとグラフィックのレベルは低く、アバターの動きもコミカルになっている。

バーチャル空間はインテリアや風景など細かい作り込みができているように見えるが、技術的はもっとクオリティを上げることは可能だという。

それをもっとリアルに近いクオリティにし、アバターの動きも自分の表情や目、身体の動きを同期させて対話の臨場感を上げることはすでに技術的には可能だが、現時点では2,3年前のスマホでもアクセスできるように調整しており、「対応できる回線やデバイスが普及するのを待っているところだ」と本城氏は説明する。

本城氏のアバターのように自身のデータを元にカスタマイズすることができる。
メタバースの開発でゲームエンジンの知識は有利になる

本城氏は日本初のゲームAI専門会社「モリカトロン」の代表取締役社長も務めており、AIをはじめ、音声認識やブロックチェーンなど様々な技術がメタバースに取り入られていくことを想定し、XR CLOUD でもAIガイドの作成やNFTのアートプロジェクトにも取り組むなどしている。

今後のメタバースの開発で monoAI technology が必要な技術について質問したところ、「開発をするエンジニアであればゲームエンジンのユニティ(Unity)とアンリアルエンジン(Unreal Engine)を使いこなせるようになっておくと有利で、他にも動作原理や差分プログラミング、データベースの知識もある方がいい」と回答してくれた。

「デザイナーであればCGモデリンクやアニメーションとそれらをゲームに取り込む知識が必要で、最近は映像制作もリアルタイム化しているのでリアルタイム3D技術も重要になっています。それにXRに関わるのであれば、とにかく関連するコンテンツやデバイスを購入して体験するのは大事ですし、できればネット上にあるものを使ってもいいので、自分で何か作ったものを人に見せて感想をもらうところまで経験すると楽しいはずです」とアドバイスする。

monoAI technology の本社は神戸・三宮にあり、東京、高知にもオフィスを構え、社員数は全体で100人を超える。新卒と中途の両方で人材を募集しており、神戸情報大学院大学(KIC)の卒業生も採用されている。以前はゲームクリエイターが中心だったが、先端技術を使った新しいサービスを作りたいという希望者が増えており、最近はXR(クロスリアリティ)のイベントをプロデュースしたり、クライアントと交渉してプランニングする総合職的な人材も採用している。技術的な知識は採用条件ではないが、プランナーや総合職に配属された場合は開発ツールが使えるよう社内で研修するという。

本城:一般的な知識が何でもインターネットで調べられる時代に自分の価値を高める方法の1つは、自分の好きなことをめちゃくちゃ掘り下げることです。興味あることなら四六時中続けても飽きませんし、掘り下げれば自然と仕事につながるでしょうし、それが学校のカリキュラムとも関連していれば素晴らしい結果になると思いますね。

オンラインゲームにのめりこんだ経験を独自のメタバース・プラットフォームを構築する原動力にしてきた本城氏が、新しい技術を活かしてさらに新しい世界観をどのように作っていくのか、これからの動きが気になるところだ。

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